コードバンの工場見学

革の王様がどうやって作られてるの?

コードバンは固く貴重で手触りも最高!「革の王様」[革のダイヤモンド」とも言われています。
日本でただ一社、コードバンだけを製造している会社が兵庫県姫路市にあります。
今回、永年の希望が叶い工場見学が出来ることになりました。ご一緒に出掛けましょう。

人気のランドセル(B-41K)コードバンです。

滑らかな手触りと深い光沢、硬くキズにも強いことから人気のコードバンですが、一体どうやって作られてるんだろう? 牛革を作る工場へは幾度も見学に行きましたが、コードバンの工場へは出掛けた事がありませんでした。 「永年の疑問を解決しよう!」と出掛けました。

工場からは姫路城が望めました。

新幹線姫路駅から車で15分ほど、工場からは世界遺産の姫路城が見えます。 以下のような質問、疑問を用意しました。

◎ コードバンが出来るまでどれくらいの時間がかかるの?

◎ 余った革の部分はどうやって使われているんだろう?

◎ 一度に何枚を作るんだろう?

◎ ウレタン塗装は何回ぐらい重ね塗りするの?

◎ 色や薬品の調合も自社でしているの?

◎ コードバンのカネ(金)の部分はどうやって見つけるの?

これが輸入されたばかりの原皮(馬の皮)です。

ちょっと衝撃的な写真ですけど、こんなカタチで輸入されます。ヨーロッパで食用に飼育されている馬の中から できるだけ大型のものを輸入しているそうです。 写真のものはポーランドから入荷した所。 これから約11ケ月の長い時間と複雑な作業を経て、コードバンに変身する作業が始まります。

大きな樽(太鼓)に入れて作業開始!

塩で固められた状態で輸入されましたから、大きな太鼓に入れて水を加え、塩分を抜いたり汚れを除いたり、石灰やアルカリを入れて毛を溶かしたりと…。 作業が続きます。太鼓の内部には凸状に棒が並んでいて撹拌します。大きな洗濯板みたいだと想像してください。多量の水が必要ですね~。

これから皮を革にする重要な工程(鞣製)の工程です。

普通の牛革などは、大きな太鼓やタンクローリーのもっと巨大な装置で撹拌して反応させますが、 ヌメ革やコードバンは大きな水槽のような装置に皮を入れて薬剤(タンニン)を入れて浸透させ 鞣製します。特にこの工場ではピットと言って、大きな木桶で反応させています。 管理が難しく高度な管理のノウハウが必要。と聞きました。

約1ケ月の間、順番に濃い槽へ移して反応を待つのです。

馬の皮(お尻の部分)をピット(木製の3m×3mくらいのの四角いプール)に100枚くらい吊るし、水とタンニン剤を入れて化学反応(浸透)が進むのを待ちます。 この工程の事を「鞣製(ナメシ)」と呼びます。 反応を促進するため、ユサユサと機械的に揺らす程度ですから時間がかかるんですね~。 油脂や繊維の部分が反応し、腐りやすかった皮が 安定した繊維分だけの革へと変身するため、次第に渋剤の濃い槽へと移して約1ケ月間。馬皮がコードバンになるのを待ちます。

馬の皮を加工してコードバンにするには

水だけでは駄目で、ミモザという南アフリカに生えている樹木の皮の部分を採取精製した渋剤(タンニン剤)を使います。ヨーロッパの 地中海あたりを初夏にドライブしていると両側に鮮やかな黄色い花々を咲かせている樹があります!あれですが 、南アフリカでは 「タンニン(渋)」を採集するため植林されているそうです。 樹皮の部分は精製してタンニンの樹脂に、木質の部分はトイレットペーパーの材料のパルプになるそうです。 ご覧のように麻袋に入ってますが、内部はアメ色の硬い固形で割らずにそのまま「タンニン槽」に浸けます。

馬のお尻の部分はピットで加工しますが…

胴体の上部の部分は普通の牛革のように太鼓に入れて加工(クローム鞣し)されます。しかし最近はコードバンと同じように ピットで鞣される事が多いと聞きました。軽く軟らかい革に仕上がることから、タンニン鞣しの馬革の需要も大きいそうです。

約1ケ月のタンニンの槽から引き上げると。

こんな状態です。心なしか永~いタンニン浸けに疲れて、なんだか縮んだように見えますね!(笑い) これから水分を絞り、カタチを整えてセービングという機械で削って厚さを整える工程になります。

いきなり大きな機械が…!

一般の事務所で使うシュレッターの内部に螺旋状の刃物がありますが、 あれの巨大な物が内部で廻っている。 と想像してください。 水分を含んで軟らかい状態で、従業員の方は2本のローラーの中を 微妙に回転させて、水分を絞ったり革を伸ばしたりしてカタチを整えていきます。

セッテイングマシーンという大きな機械に!

湿り気のある(軟らかい)間に革を伸ばしたり、余分な水分を除き厚さを均一にしたりカタチを整える工程です。 同時に湿度を下げる事もできるようです。触ってみると温かく軟らかくて湿気を帯びているのが判りました。

※上の画像(ピットから出た所)と比べ、カタチが整っているのが判りますね。

扇風機が活躍する工場。

あちこちに扇風機があるのが面白いですね。タンニン鞣しといって、牛革で多く用いられるクローム鞣しとは違い 時間をたっぷり掛けるのがコードバンの特徴。乾燥方法もエコなのが面白いですね。

しばらく寝かせるんだそうです。

セッテイングマシーンで厚さを整えてもまだ安定していないため、3ケ月くらい寝かせて熟成するんだそうです。 「寝かせるとタンニンがしっかり安定し軟らかい 風合のコードバンになるんです。」 というお話しでした。 本当に毛布を掛けてあったのには驚きました。

自然乾燥が一番みたい。

牛革の場合、熱と圧力を加えて(プレスして)乾燥させるのが普通ですが、コードバンはタンニン鞣しのため、自然乾燥が 一番らしい。工場内ではよくこの光景を見ることが出来ました。

何日間、乾燥させるのかは…

聞き忘れました。天然素材を天然乾燥ですから…。(笑い)
※天候や季節にもよりますが、10日くらいだそうです。

革を重ねて裏側を削りコードバン層(カネの部分)出す工程へ

コードバンは馬の革の表面ではなく、内側に存在するため、革の裏側(お肉の側)を機械で削ります。(シエービングマシン)。 今回の工場見学では削る工程は残念ながら見る事ができませんでした。
※削る作業のことを現場では「スネカス」と呼んでいるそうです。

裏側を削って、コードバン層が出た状態です

左側の革に色の濃い部分があるのが判りますか?ここがコードバン層です。 端のコードバン層の無い部分は軟らかいので指で触っても、すぐ判りました。 ランドセルに使用できるサイズの物は全体の5~6%とか!! 以前は30%と聞いていましたからビックリ! 出来るだけ大型の馬を求めて ヨーロッパ各地から輸入しているそうですが、ランドセルが大きくなった のも一因!と聞きました。 コードバンのランドセル、本当に贅沢で貴重なんですね!!

革の裏面を削るとコードバン層が現れます。

残念ながら「削る工程」は動いていませんでしたが、コードバン層だけが鈍い光を放っていてハッキリ判りました。 参考のため画像に白いラインを書いてみました。層の厚さはわずか1mm程、削り過ぎると消えてしまいます。

※縦に10㎝くらいの縞が見えますね、削る刃物の幅でラインが付いているのです。

ランドセルに使えるサイズは5~6%?

これも永年の疑問でした。ランドセルがだんだん大きくなってきています。 ランドセルに使用できるサイズのコードバンは何%あるんだろう? このゲージを当ててコードバン層の大きい物だけがランドセル用になります。 「30%くらいですか?」と聞くと「いえいえ、5~6%ですよ!」 という返事に 驚きました。

※私の工房ではコードバンの部分をランドセルのカブセに 使用しますが、端の部分も決して捨てたりせず、他の部品に使ったり、小銭入れを作ったり と、残らず使用しています。  

コードバン層のない部分をカット。

いびつな長方形をしていましたが、周囲をカットしてメガネのようなカタチに整えます。

※ランドセルを作る時にも革包丁を使いますが、持ち方が違うのが面白いと思いパチリ!

表面を塗装する工程になりました。

上の画像と比べると周囲がカットされてきれいなメガネ型になっています。 塗料は革の部分を検知して、その部分にだけ乗せられますから塗料の無駄もなくなる訳です。

※コードバン層の大きさにより、革の大小があるのがよく判ります。  

これは何?

ガラスの円柱を機械に挟み込み、往復させてコードバンの表面を磨いて行きます。 素朴な質問、「もっと幅の広い機械ではいけないのかな~?」今度聞いてみたいと思います。

※幅が広くなると微妙な磨きの調整ができなくなるので、やっぱりこの 幅が最適だそうです。

この作業をグレージングと言います。

職人さんの手加減とガラスの摩擦でコードバンを含んだ皮革を磨いて行くと、コードバンの部分だけが光沢を帯びてきます。 目と勘が頼りの技!ですね。知れば知るほど面白い皮革だと思いました。

グレージングされた結果がこちらです。

ほら、コードバンの部分だけが光沢を帯びてきました。皮革の表皮の下に存在するコードバン層は削って行くと 現れてきます。でも個体差が大きく表面を滑らかにする必要もあり、グレージングは欠かせない工程だそうです。

※この工程を行うのは、ナチュラルな光沢で仕上げるコードバンの場合のみで、一般のランドセル用では表面を塗装で仕上げるので、この工程は 使いません。

塗装の工程です。

これから馬革を塗装する所です。右の窓の中に塗装するスプレーが2基ぐるぐる回っていて 均一に塗装されます。センサーが働いて、革の部分だけに塗装します。このラインは3~4回 塗り重ねます。ちょうど塗装していた馬革はバッグなどに使用されるそうです。

※コードバンはここでラッカー塗装を3~4回繰り返します。

反対側へ回ってみると。

ここから塗装し乾燥された馬革やコードバンが出てきます。 この工程を繰り返します。

塗装(色付け)工程の全体です。

色の調整や塗料の吹き付け作業をする工程です。コードバンもカラーが増えてきたので 微妙な色の調合が必要です。ここでは主にラッカーの塗装が行われています

※ラッカーの被膜を重ね、次の仕上げのウレタン塗装へと進みます。

こちらは仕上げの塗装がされます。

ウレタン塗装といって、空気中の細かいチリやゴミも嫌う繊細な塗装のため、コードバン専用に別棟の塗装室がありました。 左の透明な窓の中に2台のスプレーガンがあって塗装され、右に長い乾燥ラインが続いています。ここでは1~2回塗料を 塗って強靭な表面が完成だそうです。この日は残念ながら作業を見ることはできませんでした。(残念!!)。

日頃、コードバンを扱いながら…

疑問に思っていたことが一挙に解決できた工場見学でした。遠くポーランドやフランス、イタリアなど から送られて来た馬皮が 日本の高い技術でコードバンに変身し、日本の元気な子供たちのランドセルになる。素敵ですね!
※コードバンは一頭分が、背中の中央が狭く、両側が膨らんだカタチをしていて丁度メガネの形をしているので「メガネ」と呼ばれています。

次は私たちの出番です!!

永い時間と工程を経て鮮やかに仕上がったコードバンが届きました。画像の上部のように紙包みの状態で届きます。 今度は私たちの出番です。大変な作業を経て作られたコードンバンです。子供たちのランドセルになって6年間活躍できるよう、 私たちも心を砕き半生を込めて培った技術で答えたい。と決意を新たにする工場見学でした。
※ご案内と、コメントの監修をしていただいた(有)新喜皮革の専務取締役 新田さんに、心より感謝します。

コードバンはコバの部分を磨ける革です。

カブセの周囲をカンナをかけて磨き、ニス塗りで仕上げることができますから、こんなフリフリ型の ランドセルも出来るのです。 作るのは大変難しいのですが、素材を活かすには挑戦しなければネ!!